5月から6月にかけて、ポーランドにて福井県和紙工業協同組合主催の「越前和紙と松宮喜代勝による和紙アート展」が開催され、越前和紙と一緒に、松宮作品が紹介されました。松宮作品に欠かせない材料の一つが“和紙”。出身地の福井県は、「越前和紙」の産地として大変有名ですが、その歴史は1500年。日本最古と言われています。松宮作品は初期の頃から材料にこだわり、なかでも彩相シリーズでは、麻と楮(こうぞ)を主な原料とした「雲肌麻紙」を使用しています(先生御用達の和紙については、また次回、ご紹介したいと思います)。
展覧会の前半はクラクフ・日本美術技術博物館、後半はワルシャワ・アジア太平洋博物館で、延べ11日間、開催されました。ポーランドは松宮先生自身、昔からご縁がある場所。特に日本美術技術博物館は、1998年に個展「日本の呼吸~赤と和紙との出会い~」を開催したこともあります。先日、秋篠宮ご夫妻がご訪問された、と報道されたこの博物館。建築設計は、先日、プリツカー賞を受賞した磯崎新氏。波を打つような屋根が特徴的な、大変美しい建物です。
クラクフ・日本美術技術博物館は現地では、「マンガ館」とも呼ばれることがあります。1920年に多大な数の日本美術を蒐集していたフェリクス・マンガ・ヤシェンスキ氏が、6500点もの日本美術を寄贈したことからその呼び名がつきました。 ちなみに「マンガ」は彼の愛称で、北斎漫画が大好きだったことからついたのだとか…。彼の死後、多くの美術品は梱包されたままでしたが、1987年に今は亡き映画監督アンジェイ・ワイダ氏が、その死蔵されていた日本美術品の常設展示美術館を建設するために、京都映画賞を受賞した際の賞金を寄付、他からの建設資金の提供もあり、建築されました。実は、松宮先生は故アンジェイ・ワイダ氏から高い評価を得て、展示の機会が生まれました。
展示は、福井県和紙工業協同組合の和紙とともに、松宮作品の「雅シリーズ」と「彩相Ⅰシリーズ」「森の呼吸シリーズ」が数点並びました。「彩相Ⅰシリーズ」の松宮レッドとイエロー、ブルーが強い存在感で刺激を与え、一方、「森の呼吸シリーズ」「雅シリーズ」は心を癒します。和紙に撥水加工が施された「雅シリーズ」のオブジェは、機能もあります。和紙に現代的なアートの要素が加わり、ポーランドの人たちに、ユニークで実用的な素材として伝わったと思います。 来年へのプロローグでもあったこの展示会、来年、展示する先生の新しい作品が今から楽しみです。